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第4話 運命の人?

Penulis: 一木さくら
last update Tanggal publikasi: 2026-08-13 21:53:24

「あら。なんか、男みたいな人がいると思ったら、水野さんじゃないですか」

 ……これが一体どういうシチュエーションなのかはちっともわからないけど、長身を引き立てるマーメイドドレスを着ている。こんなドレス着ていて、どうやったら男みたいという比喩ができるのかと、遥は発言の相手、小田日向子を見つめた。遥から鈴木を奪い取っていた職場の後輩だ。確かに、ふわふわの実に女子らしいドレスをまとってはいるが。

「ねぇ水野さん。知ってました?修平って本当は、バリバリ働くタイプじゃなくて、家事得意で男性を立てる、かわいらしいタイプの方が好きなんですってよ」

 ねちっこい嫌な笑い方をして、小田は遥を追い詰める。

 おかしいな。悪意はある子だけど、こんなに嫌な言い方する子だったっけ。

 これじゃまるで、ショートドラマの悪女じゃないの。

「あーーっ!!」

 遥は思わず大きな声を出す。

 わかった。これはまた夢だ。昨日みたいに、いきなりビンタされるところから始まるよりましだけど、でも小田にここまで言われる始まりも、心臓によくない。

 そして、修平――もう鈴木をしたの名で呼んでるのか、と思うが、それが現実なのかどうかわからないし、彼氏としてはもうどうでもいい。

 夢なら気を悪くするかも、なんて考えなくてもいいんだから、この場を離れよう。

 そう思って踵を返したのだが。

「きゃぁぁっ」

「日向子!どうした!」

 悲鳴とともに何かをパチンとたたく音がした。

 そしてそのあとすぐに続いた聞き覚えのある声に、いやおうなしに遥は振り向く。

 えぇぇ。またでてきた、敵役の男として鈴木が。

 そして、小田が自分の右頬を押さえて、目に涙をためている。

 なんなの。ビンタはされてないけど昨日の夢の話が続いているのか。

 嫌味な母の代わりに、嫌味な今カノが新キャラクターか?

「わたし、スレンダーなドレス、すごく大人っぽくって似合ってますね、わたしかわいいドレスしか似合わないからうらやましぃんです、って言ったら、水野さんが突然……ビンタを……」

 潤んだ目で、小田は鈴木に訴える。

 なんと。今日はわたしがビンタをする番だったのか。いや、してないけど。

 あまりのことにのけぞりそうになったが、遥は何とかこらえる。

 それにしても、しっかり「遥にはかわいいものは似合わない、似合うのはわたし」という人を下げる味付けをしながら、無実の罪を着せる言い回し、すごい。

 さすがショートドラマの悪女。

 変なことに感心していると、鈴木が顔を上げて睨みつけてくる。

「君には失望したよ。日向子は悪くないだろう。なんでそんなにいつも日向子をいじめるんだ」

 いやいやいやいやいや。

 夢なんだから取り合うまい、と思うのに、あまりにも一方的に日向子をかばう言動に、思わず反論しようと息を吸ったその時。

「俺の彼女に、何か用か?」

 えっ?

 また聞き覚えのある声が響く。これは、ショートドラマだったらいわゆる救済男の登場、だ。そして救済男とはヒロインの真の彼氏になる人で、イケメンで超優秀で……

 ここまで知った人が出てくる夢なら、そのポジションに来る異性は、一人だけ思い当たる節がある。

 でもいいのか、そんなことがあって。

 ありえない願望に身を固くしていると、隣までやってきたその彼氏の設定の男は、かばうようにふわっと自然に遥の肩を抱く。

 そうであってほしいような、違っていた方がありがたいような、複雑な気持ちで、おっと肩を抱いてきた主の顔を見ると。

「藤堂、さん……」

 想像はしていたのに、そのあまりにも現実離れした光景に、遥の意識は正常を保てなくなった。

 視界がブラックアウトしていく。

  ✿

 夢の世界の遥が、意識をしっかり保てなくなったら、現実社会の遥が目を覚ました。

「うっ……頭、いた」

 目を覚ました瞬間、頭に鈍痛を覚える。

 昨日は泣きながら麻衣と深酒したから、きっと二日酔いだろう。

 遥は昨夜の記憶をたどり直す。

「遥。飲もう。今日は徹底的に」

 突然、麻衣は宣言すると、やおら焼き肉のお皿やホットプレートの片づけを始める。

「心置きなく飲むために、まずは片づけよっ!」

 その超現実的な麻衣の対応に笑いながら、ホットプレートやお皿を洗って片付け、冷蔵庫から作り置きの冷菜を取り出し、改めてテーブルに並べると、焼酎やウィスキーなど、度数の高いお酒も並べていく。

 飲みながら愚痴り、泣きつかれたころ、麻衣の彼氏が迎えに来たから麻衣を送り出し、冷菜を冷蔵庫にしまうとそのままベッドに倒れ込み……

 それで見た夢が、悪女の小田と元カレクズ男の鈴木。なるほど。

 記憶をたどり直し、つい先ごろ見た夢に一瞬納得しかけた遥だったが。

 いやいや、なるほどじゃない。最後の藤堂さんは、どういうこと?

 藤堂さんは、確かにヒロインを溺愛するよくあるスパダリCEOにふさわしいといえばふさわしいが、かといって、遥を救いに来るヒーローになるには、つながりは少ないはずだ。

「でも、ドラマのヒーローたち、そういえば突然現れる系多いわよね」

 ふとそんなことをつぶやき、そんな夢想をする自分に、遥は自嘲した。

 そんな夢みたいなことがあるわけがない。

 ドラマはドラマ。区別しなきゃ。

 痛む頭を抱えて、遥はため息をついた。

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